ジャニーズワールドの現在(日本語ラップと自分探し5)
司会者「もしかして行き詰ってません?」
kenzee「オレはこの2週間ぐらい、嵐及びジャニーズについて考えてきた。そしたらどうにも思考が堂々巡りになっちゃったんだな。コレが。オレはジャニーズ文化を改めてちゃんと捉えなおすべきだと思った。我々が「ジャニーズ」という言葉から連想するのはカワイイ顔した男の子たちがローラースケートで滑ったりバク転したりしながら歌ったり踊ったりするというものだ。そしてタレントたちは訓練生の中からエグゼグティブ・プロデューサーがスターを抜擢するというもので宝塚によく似たシステムといえる。いまや全国に支部を持つ沖縄アクターズスクールも同様のシステムだ。つまり極めて職人芸的なエンターテイメント集団であり、リアリティ重視のジャーナリズムからは仮想敵にされやすいプロダクトなのだ」
司会者「つまり「ロ」とか「キ」とか「オ」とか「ン」とかがつく雑誌などで仮想敵にされやすいということですね」
kenzee「だがいろいろ調べていくともはやジャニーズとは我々が認識しているようなベタなアイドル集団ではなくて、どこまで喜多川さんがコントロールしてるのかわからないポストモダン状況にある。まず、嵐の特徴として、彼らはCD制作においてクリエイティブの面でかなり関わっているという点。櫻井翔は2003年のシングル「言葉より大切なもの」以降、ラップ部分の歌詞の全てを担当している。また嵐のステージプランを担当しているのは二宮和也だ。櫻井は俳優としてドラマ「木更津キャッツアイ」に出演した。この宮藤官九郎の脚本によるヒットシリーズだが、クドカンの脚本というのは通常のドラマのシナリオとは違うようなのだ。文藝クドカン特集によるとクドカン脚本とはコントの台本のように大きな枠組みと設定のみで小ネタなどはその場で作られることが多いという。櫻井もまたクリエイティブの面で多く関わったのだろう。だが、ジャニーズタレントがクリエイティブに関わるのは嵐が最初ではない。もともと90年代からそういう流れはあったのだ。90年代を代表するジャニーズグループといえばSMAPだ。彼らは意識的に従来のアイドル像を壊そうと目論んだ。王子様のような虚構の存在としてジャニーズは芸能界に君臨してきた。だが、SMAPは等身大の若者であろうとした。マッチやトシちゃんや少年隊のようにアイドル然とした衣装を身に着けなかった。ストリートを意識したカジュアルな服装で我々の前に現れた。そして積極的にバラエティ番組でのお笑いトークを買ってでた。そしてSMAPの楽曲は筒美京平先生や松本隆先生のようなプロの作家に発注せず、山崎まさよしやスガシカオ、槇原敬之といった90年代以降に登場したシンガーソングライターに託した。いったい、SMAPが体現していたものがなんだったか、おわかりかな?」
司会者「ま、まさか……「自分探し」じゃ!!!」
kenzee「その通り。バブル崩壊後に登場した彼らは「本当の自分」「本当のジャニーズ」を求めて歩き出した。確かに彼らはジャニーズアイドルでありながらほとんど喜多川さんの影が見えない。彼らが視聴者に訴えたのは「華麗なダンス」でも「きらびやかな衣装」でもなく「セルフコントロールするアイドル」だった」
司会者「しかし、それは欺瞞では?」
kenzee「そうだ。単に彼らは「ストリートワイズ」というコンセプトを掲げたに過ぎない。彼らほどそのストーリーが喧伝されたグループも珍しいのだ。いわく「キムタクは苦労人だ」「SMAPは最初、全然売れなかった、でも敏腕マネージャーとの結束の強さでスターダムにのし上がった」「でも人気がでてもフツーっぽいとこがステキ!」などいかにもな物語に裏打ちされていた。95年以降、SMAPのステージングを監修しているのは中居正広だ。つまり、ジャニーズタレントのクリエイティブへの介入は95年あたりから始まっているのだ。97年デビューのKinki KidsはSMAP人気を背景に「伝統的なジャニーズ文化の継承」をコンセプトに典型的な「王子様」として登場する。デビュー曲「硝子の少年」は「ジャニーズらしい濡れたメロディー」を意識して書かれたものだ。作曲を担当した山下達郎の当時のインタビューを紐解いてみよう。
Q「Kinki Kidsの「硝子の少年」予想外の音作りがすごく興味深かったんですが」
達郎「ボクのファンにはうるさい人が多いから、あの曲に関してはひとこと言いたい人もきっといるだろうな。でも、あの曲をつくるに当っては色々と苦労があってね」(中略)
Q「どのように状況を打破されたんですか?」
達郎「今、筒美京平さんだったらどういう曲を書くのかなって思って。僕にとってのジャニーズっていうのはジャニー喜多川さんが作られた40年近く続く一種の伝統芸能なわけ。(中略)僕はマッチや少年隊のプロジェクトを横から見ることができたんで、そうした「ジャニーズ的」な色合いについてある程度知識があった。それを形作ってきたのには筒美さんや馬飼野さんたちの作ったメロディーラインが大きな役割を果たしてるんだよね。だからひとことで言えば「よろしく哀愁」と接点を持てるような曲にしようと思って、それであれになったの」
Q「なるほど、だからあのマイナーメロディーなんだ」
達郎「販促用のパンフに載せた僕のコメントがあるんだよ。「フォーリーブスを生きたママたちと、今まさにKinkiを生きる娘たちとが、時を越えてつながる何かを表現できたらと思い、この曲を作りました」これがあの曲のコンセプトのすべて。(中略)作家の世界も今、転機でね。作家としてのプロがいない。みんなシンガーソングライターと呼ばれる人たちで。そういう人たちは得てして自己主張を過度にアイドルに押し付けようとする。(中略)自分で歌えない曲を作れるのが作家だって思ってるから。でも、そういう美学って今、あまり通用しないからなあ。素人音楽家に牛耳られてる時代だから」(TATSURO MANIA(ファンクラブ会報)No.23.1997Autumn)
このように山下氏もSMAPのCD制作の方針に違和感を持っていたようだ。だが、果たしてKinki Kidsが山下氏がイメージしたような「伝統的なジャニーズ」の世界を受け継いだかどうか。堂本剛は早くもセカンドアルバムで自作曲を披露する。以降、セルフロプデュースを強く打ち出すようになり、やがてソロで活動するようになる。ところでオシャレで知られる堂本剛だが、CDのジャケットなどのアー写の衣装は彼の自前である。(ことが多い)」
司会者「つまり、山下さんのなかの「ジャニーズ」とは古きよき時代のもので、もはや昔には戻れないっていうことですよね。事実、シンガーソングライターがSMAPに提供した「セロリ」(山崎まさよし)や「夜空のムコウ」(スガシカオ)は大ヒットしたわけで」
kenzee「このような状況を背景に、嵐が即席で結成されたグループの割にサッサとクリエイティブを発揮するようになったのにはすでに90年代に前提ができてたのね」
司会者「ところで、嵐の作家って誰なんですか?」
kenzee「一応CDのクレジット色々見てみたんだが、知らない人ばっかりなんだな。一応こないだのエントリーの「A Day in Our Life」の作曲はスケボーキングによるものだ。嵐の楽曲は主に作曲は飯田建彦、山本博、ZAKI、といった人々、作詞に元東南西北の久保田洋司、戸沢陽美といった職業作家が配されている。つまり、「レコード」という製品単位で見れば Kinkiなんかよりよっぽど嵐のほうが鑑賞に耐えられる出来なのだ。だって素人曲なんか入ってないからね。もちろん、そういったプロのトラックに自作のラップを乗せるのが難しいのは言うまでもない。ところで日本語のラップシーンもこれだけ成熟した現在ならそれらしいリリックを書くのは比較的難しいことではない。オレら登場、気分は上々、ここ東京、王道を暴走とか言ってればいいわけでいまや誰でも書けるんだよ。そうなると「誰が、なにをメッセージしているのか」というリリックの内容が重視されるようになる。多くのアイドルラッパーはこういったラップを取り巻く状況に対して無頓着だ。KUT-TUNの田中聖も例外ではない。2006年発表のデビューシングル「Real Face」において田中は見事な早口ラップを披露しているがラップの定型文を並べただけという印象も否めない。
俺がハスラーKID これ果たすだけ 声枯らすわけ 越えられるかDis それは誰かだ? Ha-Ha俺はJOKER DoopなRhymeで泣きだす嬢ちゃん 待ちに待ったこれが俺のShowTime 壮大キメろ All Night ヤバめなFLOWで湧きだす場内 Westside Eastside 上げろHands Up!(KUT-TUN「Real Face」2006年)
まあコレ一曲で田中さんをDisるのもアレなんで今後が楽しみだということで。で、櫻井のラップを考える上でどうしても聴いていただきたい曲がるのだ。2008年発表の8枚目のオリジナルアルバム「Dream"A"Live」はCD2枚からなる大作なのだが、Disc.1がニューアルバム、Disc.2がメンバーのソロ曲が人数分、収められている。当然、我々としては櫻井のソロに着目するワケだが、これがちょっとスゴイ曲なのだ。「HIP POP BOOGIE」これ聴いて、みんなちょっと考えてみて欲しい。結論は次回に回したいと思う。ラップとは「誰が、なにを発するか」が重要だって話。さすがにソロ曲までYou Tubeになかったので自分で上げてみました」
司会者「(エ!?コレkenzeeが自分でアップしたの? このアナログ人間のどこにそんな技術力が?)」
kenzee「MP3Tube便利だワ~これから手持ちの音源アップできるからJ-POP評論スゴイよ!」
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