kenzeeのひとり忘年会
kenzee「ボクの会社、28日が仕事納めなんですよ」
司会者「はァ、オツカレだったね」
kenzee「で、29日は毎年自分の部屋の大掃除をするワケだが」
司会者「どうせどんどん物が増えて収集つかなくなってるんだろ」
kenzee「本棚を整理してみまシタ」
司会者「全然整理されてないじゃん!ジャンルもなにもメチャクチャ。音楽も新書も連合赤軍もグチャグチャ」
kenzee「サリゲに木村先生の本とか前に持ってきたりして」
司会者「ヤラセじゃん!」
kenzee「ちなみにこの本棚はコーナンで売ってる自分で組み立てるヤツだが、おわかりだと思うが二列に並べてしまっている。奥の列の本をちゃんと把握してなくて持ってる本また買ってしまうこともシバシバ。でも奥にあるのは普段必要のない本ばっかりなんだ。村上春樹の「1Q84」とか」
司会者「コラコラ」
kenzee「昔の文芸誌とかこんなに」
司会者「もう捨て捨て捨て!ゴミゴミ!」
kenzee「今年のブックオフ最大の収穫はこのFRONT(ヒップホップ雑誌blastの前身)の昔のバックナンバー一冊100円で一気買いしたことかな」
そんなワケで一応片付けたので今年の読書を振り返ってみたい。結局今年は新書ばっかり読んでた気がするなあ。で、今年読んだ本の一位はもう決まってるんだ。コレ。「レコード・バイヤーズ・グラフィティ」(ミズモトアキラ著・リットーミュージック)
「ヴァイナル・マニアの数奇な人生」という副題がついているが、その通りソノシートにとりつかれた女性、岡本みどりさん、レコード博覧強記で知られる常盤響さんがたどりついたアジアレコの世界。レココレのインパクト広告でオナジミ、フラッシュディスクランチの店長椿正雄さんなど、真のヴァイナルアスリートたちのディープなレコード人生を聞くドップリ深い一冊。ボクが一番心に残ったのは馬場正道さんのインドネシアのレコード探訪記だな。馬場さんはGROOVEなどにも時々登場する20代前半の好青年なのにインドネシアのポップスに魅せられてしまった。たったひとりでフィリピン、ジャカルタ、そしてインドネシアのかなり危険な地域まで足を伸ばしてレコードを漁るのだ。で、やっぱりイタイ目にも遭う。これはもはや青春小説だ。彼は「ファンキー・コタがブームのようだが、インドネシアにはもっといい音楽がいっぱいある」と主張する。とにかくボクは誰もしらないレコードをたくさん持っている人は無条件に尊敬しちゃう。次はコレ。「文化系のためのヒップホップ入門」(長谷川町蔵x大和田俊之著・アルテスパブリッシング)
これは山下達郎もファンクラブの会報で「今年の一冊」と絶賛していた目からウロコの一冊だ。ヒップホップ文化の発生から現在に至るまでの流れを社会学的、文化史的に追っていく。ひとことで言うと理想的な「反ロキノン批評」。これほど「思い入れ」と無縁な音楽評論は見たことない。特に2000年代のUSシーンについてはサッパリついていけてなかったので勉強になりました。後半、ヒップホップとは「場」なのだ、という結論は奇しくも宇野常寛さんの「リトル・ピープルの時代」における「サブカルチャーのゲーム化」という話にシンクロしていてオっと思う。とにかくコラムまで捨てページなし!1800円だが、全然安いよ!」
司会者「今年の新書はどうです」
kenzee「去年の年末から今年にかけては新書は豊作だったなあ。これは去年でた本だけど今年読んだ一位。「創られた「日本の心」神話」(輪島祐介著・光文社新書)

要は演歌の研究書なのだが、我々が「演歌」という言葉から連想するようなNHK的なイメージとは最近、少なくとも70年代以降に捏造されたものであって、演歌とはもっと反社会的なものだったし、被差別階級の怨歌だったし、また洋楽の輸入音楽でもあった。本来もっと豊かなものだったのだ。演歌が現在のイメージを獲得するまでには左翼文化人に便利に使われたり、藤圭子の登場でアイドル的な金を生むシステムになったり、紆余曲折を経ている。ボク的には藤圭子のプロダクトが後のアイドル歌謡の原型になったというところに目からウロコが。一般には南沙織がアイドル一号とされているが、実際には若年者層を明確にターゲットにし、支持を得た藤圭子こそが最初のアイドルだったのだ。後半、椎名林檎に代表される「昭和歌謡」まで手をのばしているがボクはむしろそっちよりシャ乱Qを取り上げるべきではなかったかと思う。当時近田春夫が「ジャンル名をつけるならハードコアムード」を言ったように正しく演歌的感性を継承していたのは彼らだったと思うのだ。また、演歌をはじめとする日本の大衆歌謡に連綿と見られる女性蔑視の感覚は小室哲哉の歌詞に継承されていたと思うのだがどうか。藤圭子に繋がるのは椎名林檎ではなく、モチロン宇多田ヒカルでもなく、華原朋美だと思うのだ」
司会者「さっきのヒップホップ入門でもラップにおける男尊女卑が論じられていましたね」
kenzee「うん、ポピュラーミュージックの中の女性、というのは最近よく考えてるんだ。70年代まで女の人の歌う歌は女々しいものだったのに、男をヨイショする歌ばっかりだったはずなのに今、そういう歌手っていないじゃん。AKBとか全然女々しくないし。いつからそうなったのかとか考えるんだ」
司会者「アニソン歌手とか女々しそうですよ」
kenzee「新書はいっぱいあってマイったな。荻上チキさんの「セックスメディア30年史」(ちくま新書)エロ本や、AVといった長閑なメディアから出会い系、アダルト動画サイトといったデジタルメディアへの変化、またはTENGAに代表される大人のオモチャのカジュアル化、2000年代の条例改正後の風俗の現在、など当事者のインタビューも交えた力作だ。ザックリ言うとエロメディアがどんどん目に触れにくくなって、より機能的になった10年、という感じかな。アダルトサイトにせよ、派遣型風俗にせよ、パッと目につかなくなっている。一番おもしろいのはTENGAの社長の話です。逆に川本耕次「ポルノ雑誌の昭和史」(ちくま新書)はもう若い人は知らないだろうビニ本、自販機本の歴史を残しておこうという時代の証言だ。コワモテの著者だが軽妙な筆致でエロ本の黄金時代についてあれもこれもと語り尽くす。川本さんは70年代のエロ本についてのサイトも運営していて、これはサブテキストになるのでスマホ片手に読むことをオススメする。
B5判64ページの夢 http://www2.alice-novell.cc/pict/b5/index.html
あと、ボクはミュージックマガジンに寄稿させていただいたことがあるのだが、今年はミスターミュージックマガジン、中村とうようさんが急逝した。なんとも不思議な亡くなり方だったが、そういえばとうようさんの文章ってちゃんと読んだことなかった。なので
便利な本がでたので買った。「中村とうようアンソロジー」(MUSIC MAGAZINE増刊)。とうようさんの音楽の趣味のスゴイところはこれだけネットとかが普及して音楽の趣味が多様化した現在から見ても傍流であり続けているということだ。どんな辺境な音楽もすでにとうようさんが通ったあとのような感じがするのだ。あとは、渡辺祐著「歌う国民」(中公新書)。ここでも左翼論壇に歌が便利に使われるという歴史に触れている。面白いです。やっと文庫化した原武史著「滝山コミューン1974」(講談社文庫)70年代の団地の話って時点でワクワク。津田大介+牧村憲一「未来型サバイバル音楽論」(中公新書ラクレ)津田さんはレンタル文化を初めて歴史化した人。前作「だれが「音楽」を殺すのか?」とあわせて読みたい。町山智浩著「トラウマ映画館」(集英社)観たい、しかし観れない。忘れちゃいけない速水健朗著「ラーメンと愛国」(講談社現代新書)。それからというもの、昼メシに天一食う回数増えてる希ガス」
司会者「それに今年はクイック・ジャパンさんにはお世話になりましたね」
vibesというコラムページに96号~99号にかけて書かせていただきました。maiko、UNISON SQUARE GARDEN、KREVA、ラーメンと愛国と結構好き勝手に書かせていただいてQJさんの太っ腹に感謝。原稿料の大部分が本代とかCD代に消えていったのだ。新手のマッチポンプ産業か」
司会者「違うよ! 今年はあんまり更新もしてなかったのに依頼してくださってありがたかったね」
kenzee「ベタなこと言うとやっぱり震災以降、なにも書く気がしなかったよね。ツイッターすら書く気がしない。なにを書いても虚しいような気がしたし。その証拠に震災直前とかあさま山荘の話で大盛り上がりだったわけで。それが急にやる気がなくなった。ボクは関西人なので直接はなにもないんだけどそれでも影響があったんだね。もし原稿の依頼をいただかなかったらブログ自体やめてたかもしれないね。もちろん今でも3.11の問題はなにも解決してないんだろうけどそろそろ書きたい欲が高まってきてる感じがするね。そろそろ文芸誌のほうに戻ってみたい気もするし」
司会者「今年は夏にスマホ買って以来、スマホばっかりいじってなかった?」
kenzee「ヒマさえあればいじってたなあ。イカンなあ。年末年始は読む本もいっぱいあるんだ。古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち」(講談社)これは途中まで読んだ。仲俣暁生「再起動せよと雑誌はいう」(京阪神エルマガジン社)面白そう。磯部涼「音楽が終わって、人生が始まる」(アスペクト)タイトルいいね。雨宮まみ「女子をこじらせて」(ポッド出版)話題になってるね。東浩紀「一般意志2.0」(講談社)まだ読んでなかった!木村紅美「春待ち海岸カルナヴァル」(新潮社)よく働くなあ。これだけ読みます。正月はコタツからうごけないヨ!」
司会者「音楽は?」
kenzee「今年一番聴いた曲はライムスター「into the light」。一番聴いたアルバムはUNISON SQUARE GARDEN「Populas Populas」。あと岡村ちゃん「エチケット」。スガシカオのベスト「Sugarless2」も良かった。イロイロあった2011年だけど来年はもうちょっと景気がいい感じでいきたいね。これで書き納めということで、あとは飲むだけだね」
司会者「ガンマGTP高かったんだろ?ホドホドにしなよ」
kenzee「ア、追記。夏頃にこの記事で面白いサイトのホテルヘルス梅田「ヒーローズ」 を紹介したところ、店長さんからお礼のメールが来るなどホノボノした展開になったが、当時ヒーローズは狭い路面店だったのが今や広い待合室のあるテナントに引っ越したのだ。だが、相変わらずサブカル丸出し営業のようだ」
司会者「繁盛しているのかな」
kenzee「サイトの文章も相変わらず飛ばしているようだ。商売繁盛でなによりだ。それではみなさんよいお年を!」
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