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aikoナメすぎとの批判を受けましたので全曲聴き会を行います。(第一回「小さな丸い好日」)

司会者「前回の記事におけるaikoの音楽の認識が甘いのではないかとの批判が!」

kenzee「aikoはフニャチンについての歌ばかりではないというファンからの指摘」

司会者「いったいオマエはaikoさんの音楽をどれほど知っているというのか」

kenzee「「花火」とか「カブトムシ」とか「ボーイフレンド」とか」

司会者「そこらのオカン並みの知識やがナ!」

kenzee「ウチのオカンが「宇多田ヒカル?知ってる知ってる~キャンユーセレブレートやろ?」と言ってたのと同レベルということかな?」

司会者「aikoをよく知らないでよくああいうことが言えるな、キミは」

kenzee「aikoは1998年7月にポニーキャニオンよりメジャーデビューしたのだが、このとき私はCD屋で働いていた。この時のことは不思議とよく覚えている。ナゼならこのaikoのデビューと同じ日にキャニオンの最終兵器、「だんご三兄弟」がリリースされたからだ。すでにFMのラジオパーソナリティーとしては有名であったaikoのデビューシングル「あした」はわずかだが入荷した。(3枚とかですよ、確か)しかし、キャニオンが物量、宣材、返品率で社運を賭けて大プロモーションを行ったのはモチロン「だんご三兄弟」であった。結局、「だんご」祭りでaikoのデビューは影の薄いものとなった。aikoはこのデビューシングル以前に2枚のインディーズ・ミニアルバムと一枚のコンピ盤に参加しているが当時、私はそれらの存在を知らなかった。なので「あした」が純粋なデビュー曲だと思っていた。「あした」はサンプル盤がきていたので一応、耳は通していた。ファンの間では有名だが「あした」はaiko曲中、唯一、職業作家による曲でハッキリ言ってこの曲だけが浮いている。作曲、編曲を担当したのはSMAP「SHAKE」「ダイナマイト」でオナジミの小森田実だ。当時流行りのシンセの打ち込みによる典型的なJ-POPであった。98年といえばもう目の前にクラブミュージックのブームが控えており、すでに宇多田ヒカルやMISIAがデビューしていたのである。また、ドラゴン・アッシュのミクスチャーロックのシングルの攻勢が始まっており、その時代状況を鑑みても「ナシ」なシングルであった。「この歌手は売れない。ハッキリ言って曲がダサい。声だけで人を圧倒する、という声でもない。(宇多田やMISIAがまさにそうであった)何らかの素養はあるのだろうが、完全に時代遅れだ」と私は思った。これが当時の私のaikoの偽らざる感想だった。人間の第一印象というのは意外なほど大きい。翌年の春にリリースされた1stアルバム「小さな丸い好日」もサンプルがきていたが、結局聴かずじまいであった。結局、私のaikoの評価を大きく変えることとなったのは「花火」のブレイク時であった。つまり、一般人と同じタイミングだったのだ。その後の快進撃はみなさんご存知の通りだ。その後は逆に「売れセン」の人、というイメージで、キチンと聴こうという機会を逃し、2002年には私がCD屋自体を辞めてしまったので、さらに聴く機会を逸し現在に至る」

司会者「改めてwiki見たらこんなスゴイ業績を残していたとは!」

kenzee「オリジナル・アルバム10枚っつたらもう大御所でっせ!」

司会者「シングル29枚にベスト盤2枚。ごっつあんでッス!」

kenzee「さらに紅白には11回出場、10回連続出場という、キミは北島事務所所属の演歌歌手なのか?と目を疑うような華やかな業績だ。ボクはaikoを見くびっていた。aikoがこんな巨大な存在になっているとはおもわなんだ」

kenzee・司会者「aiko完全にナメてました!スンマセン!」

kenzee「そこで反省の旅に出ることを決意した。菅直人ならお遍路の旅に出かけるところだがボクは旅行がキライなのでaikoのオリジナルアルバム全曲聴き会マラソンを行うことにした。早速、ツタヤにて全オリジナルアルバム(10枚!トホホ)を借りてきて、今、リッピングし終えたところだ」

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司会者「そしてウォークマンに放り込んで「aiko」のトラック数見たら125曲だって! 大変な旅だよ!((((;゚Д゚))))」

kenzee「しかもこれで「全曲」ではない。さすがにツタヤにはインディーズ時代の盤は置いてなかった。また、シングルのカップリング曲の未発表なども多く、いくつかはベスト盤「まとめⅠ」「まとめⅡ」に収録された。またベスト盤に収録された古い曲のいくつかは再録したものらしい」

司会者「ソレ、全部聴かないとお遍路の旅にならんじゃん?」

kenzee「もう、勘弁してクダサイヨ~」

司会者「しかもアンタの借りてきたCDのうち、2003年発表の「暁のラブレター」はCCCDじゃない? それしかリリースがないんならしょうがないけど、2005年にはちゃんとSACDの高音質盤がでてるよ? 音楽評論家なら最高音質の盤で聴き会をすべきではないか」

kenzee「そんなんタイヘンッスヨ~。すぐに手に入るヤツでいきましょうヨ~」

司会者「この評論家、薄くなってる! 兄さんが透けてみえるよ!」

kenzee「そんなことよりねえ、10枚借りようと思ってホントに全部借りれたことが驚きですよ。この学生が冬休みの時期、しかもお年玉とかでフトコロもちょっと潤ってる時期に若者に人気の歌手のCDが全部揃うとは思っていなかった。実際何枚かはレンタル中でした。しかし、aikoほどの大御所ともなると1タイトルにつき、数枚置いてあるのね。で、どれもケースが割れてたり、キズいってたり、皆さんホントにaikoを愛しとるよ」

司会者「ときどき全然キズのひとつもないキレイなレンタルCDあるものね」

kenzee「というわけでいよいよお遍路の旅にでるわけだが」

司会者「ていうか新年早々そんなマラソン企画、意味ある? その125曲ボチボチ聴きながら、時々aikoはいいニャ~とか言ってればいいやん。やることいっぱいあるだろう。年明けたけど去年の本、ベスト10とか」

kenzee「これをただの「水曜どうでしょう?」的なマラソン企画だと思ったら大間違いだ! これは昨今の音楽ジャーナリズム(ネット界隈の議論含む)への批評なのです」

司会者「(ア、面倒なツボを押してしまったみたい)」

kenzee「ここ10年の音楽ジャーナリズムとは一言でいうと、総論の言説ばかりが溢れ、各論をやる技術継承が断絶された時代、ということになる。一体、この10年でなにが起こったか。ネットと配信の普及にともなう従来の音楽産業構造の崩壊。つまり「CDが売れなくなった、CD販売に代わる音楽のマネタイズは? 配信ビジネスはどうなる? 大手メーカーの統廃合、違法ダウンロード刑罰化……」これらの議論とは音楽の話ではなく、音楽を取り巻く環境の話なのだね。問題はここ10年の音楽雑誌がマズったのは「音楽について語る議論」と「音楽産業の環境の議論」はわけて考えないといけなかったんだが、そこを誰も交通整理しないまま、10年経ってしまった、という点にある。結果、どうなったか。みんな音楽を取り巻く環境の議論についてはやたらレベルが上がった。が、音楽を語るスキルが相対的にみんな(プロを含め)ダウンしてしまった。それはこの10年、言葉とか用語のレベルで技術継承が行われなかったことによる。これはなにも音楽ジャーナリズムのみならず一般の企業でも起こっているありがちな話だ。たとえば今、40代ぐらいの会社員がツライのは彼らの後輩となるべき30代を(最初の就職氷河期にあたる)会社がまともに採らなかったために、またその穴埋めを派遣社員などに丸投げしてきたためその世代が空洞化しているのだ。本来なら管理職へステップアップしないといけない40代がうまく技術継承が行われないがゆえに現場から離れられないという現象がある。「音楽を語る」。この訓練を10年間サボってきた代償は大きい。若い世代に顕著だが、音楽を語る訓練をしていないので(そういう言説を読んできていないので)音楽に対して、「ノリが悪い」「(演奏が)上手いか、下手か」「(サウンドを語る語彙を持っていないので)音、スカスカじゃん」「(ポップミュージックとはあるフォーマットを共有するゲームであるという前提を理解していないので)コレ、~のパクリじゃん?」「(好きなバンドの)誰それがいいって言ってたから聴いてみたけど全然エモくねーし(歴史観の欠如)」あるいは「マジ、泣けました」「歌詞に感動しました」「朝、聴くと元気がでます」「(若手論壇の悪影響受けたヤツ)~ってグローバル社会の暗喩でしょ?」といった議論以前の感想文が飛び交うこととなる。これらの感想文をプロのライターが笑うことができるだろうか?」

司会者「あの、話が長くなってきたんでまとめるけど要は、「じっくりレコードと向き合って音楽について考える」という訓練をみんなサボってきたよな!っていうことかな?」

kenzee「せっかく「音楽」の話で盛り上がりかけてるときに「つっても結局、バカな大衆はAKBと嵐にしかカネ使わないんだよな」とか言ってブチ壊しにする現象、(プロでもいるよ)もう名前つけてもいいと思うんだけど」

司会者「それとaikoマラソン関係あるのか?」

kenzee「ワタシ、これからアルバム10枚、125曲についてアレコレ言うわけだけどもルールを課すことにします。つまり、CDのなかの音楽の話しかしない。盤と歌詞カード、クレジットがすべて。これが音楽評論の原点なの! 他はいらん! それで間が持つか? 間が持つのがプロなのです。間が持たないヤツが「この音楽は~格差社会における~資本主義経済における商業音楽とは~」とか音楽と関係ない屁理屈で逃げるわけです」

司会者「(アレ?大丈夫か?常見陽平さんDisになってないか?)」

kenzee「商業主義と商業的なスタイルは別モンだからね」

司会者「(もう撤収しようかなア)わかったけど、それだったらaikoの件はゴメンナサイでアンタの得意な山下達郎でマラソンすればいいじゃない。資料も充分にある。曲数も200曲以上。マラソンとしては充分。そして息切れすることもないだろう」

kenzee「ボクがそれやるとそれなりのものになるだろうけど読み物としてスリリングさはなくなるだろうね。こういうとき、好きなアーティストの話してもしょうがないのよ。よく知らない人の話するから緊張感がでるんであってね。かといってゴールデンボンバーとかまったく未知のものだと確実に息切れする。ヴィジュアル系よく知らんし。そう考えたときにaikoは絶妙な距離だと思ったの。まず、ホントによく知らない(ゴメンナサイ)。冗談抜きで5曲ぐらいしか知らないのだ。だが、音楽的には息切れしないで走りきれそうなタイプだ。なにしろ昔、LOVELOVE愛してるでシュガーベイブの「今日はなんだか」をカヴァーしていた人だ」

司会者「そういうことなら、まあ、じゃあ、始めましょうか。aikoマラソン。一発目は1999年7月リリースの記念すべきファーストアルバム「小さな丸い好日」

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・1曲目「オレンジな満月」

kenzee「アルバム1曲目にふさわしい躍動感のあるトラック。バスドラ、ピアノ左手、タンバリンが8分の刻みで突進してくる。サンプリング音源でない生ティンパニが轟く。ストリングが被ってきたところで歌が始まる。ポール・マッカートニーのような60年代ブリティッシュ・ポップの世界。それぞれの楽器が微妙に左右にパラってあるブリティッシュ風ミックスも洒落た遊びだ。かつて竹内まりや「マージービートで唄わせて」においてもこのようなミックスの遊びがあった。女性ボーカルシーンが大きくブラックミュージックに傾倒し始めるこの時期に後期ビートルズのポール曲クローンで幕を開ける時点でマーケティングというものをまるで考えていないことを窺わせる。そしてこの、「aikoは世間の音楽の流行とカンケーありません」という態度はこの13年間、変わっていない。「カーテンのすき間のぞいてるオーレンジ色の~」というサビ以外のメロディが複雑で一回聴いただけでは覚えられない。その点でも後期ビートルズ的である。基本、aikoらしい底抜けに明るいポップではあるが、背景に流れるのは陰鬱なブリティッシュの曇り空だ。この複雑な構造がaikoの決定的な個性である。熱をだして寝込んでいる少女が「いつか同じ温度で時がとまるほどのキスがしたい」と願う歌詞は未だアーティストとしては雌伏期であった彼女の置かれた状況のメタファーである。この翌月に放ったシングルがオリコン10位を記録し、ヒットメーカーの道を歩き出すことになるとは本人もこのとき夢にも思っていなかっただろう」

司会者「こんな調子で125曲いくの? ホンマに大丈夫か?」

kenzee「父ちゃんのためなら、エンヤコラセー」

・2曲目「ジェット」

kenzee「アルバム2曲目にふさわしいシンプルなピアノ・ロックチューン。ドラムの派手なサンプリング・ビートにベース、エレピ、シンセのストリングスが飛び回る。アレンジの単純さから鑑みてもライブを想定して作曲したであろう1曲。だが、「ライブ用だから単純なロックンロールでいいだろう」というような適当な曲作りではない。「きっと飛べるとおーもうんだー」の「おーもうんだ」A→D#dim7→Dとこの箇所のみロックンロールに似合わぬディミニッシュコードが登場する。小さなことだがこの点がこの曲に決定的な個性を与えている。この曲から離れるが、aikoの曲作りには実験的な面も見逃せない。「さあ~サビに突入だー」という絶頂ポイントで分数和音に突っ込むとか神風特攻隊みたいな曲とかある。なんという曲かは知らないがそのうちバッタリ出会うだろう。「カブトムシ」のようなバラードが作れるひとなのだからこの人はポップスの定石を知り尽くしているのだろう。その上でムチャなことをシレーっとした顔をしてやる。サビのド頭のメロディが9thだったりとかC→F→Gのような循環コードのなかにポツンとヘンなテンションコードが挟まったりするという具合に。この人は歌いにくい歌をわざと作っているのか? たとえば吹奏楽部がaikoの曲を取り上げた場合、スコア担当者はコーディングで頭を悩ませることになるだろう。よくあるオリコンヒット曲だとナメてかかると痛い目に遭うのがaiko曲なのだ」

司会者「ガンバレ、あと123曲!」

kenzee「コレ、もしかしてお遍路のほうがラクかもしれんぞ」

・3曲目「私生活」

kenzee「ホッと一息、という感じのミディアム・ポップ。サビになると突然、ファズギターが登場してビックリする。おそらく元のデモテープはいたって普通のピアノ弾き語り曲だったのだろう。どういう方向にアレンジを持っていけばいいのか。アレンジャー泣かせの曲である。14年後の未来人から言わせていただくとファズギターは不要。ギターが3本も入っているのは悩んだ痕跡か」

司会者「そのぐらいのスピードでいかないと死ぬぞ」

・4曲目「歌姫」

kenzee「このアルバム最初のバラード。典型的なピアノ・コンボの編成のビリー・ジョエルのような曲調。ふと思ったのだが、ナゼ、この人はバンド編成にこだわるのだろう。ソロ・ボーカリストなのだからサウンドは誰に気をつかうこともなく、柔軟に変化させてもよさそうなもんだが、かたくなにドラム、ベース、ギター、ピアノ(キーボード)の4リズムでものを考えているようだ。紅白で聴いた曲もそんな感じだったことを考えれば13年以上にわたって基本、彼女はこの考えを変えていない。ちなみに彼女に大影響を受けたという転校生はサウンドに関しては奔放である。「家賃を払って」などはエレクトロニカといっていいサウンドだし、アルバムトータルで80年代の香りがするのだが、aikoはこの13年間、ビリー・ジョエル風70年代っぽさを守り通している。おそらくあの人は一見、若そうに見えるが実は団塊世代なのではないか」

司会者「またそういう余計なことを言う」

・5曲目「赤い靴」

kenzee「中途半端なハードロック。というかaikoって意外とギターの成分が多いことに気づく。ま、5曲目あたりで中だるみが起こるのもこの時代のCDにはよくあること。現代のように配信で1曲づつ購入できる時代になるとこの手の曲は見向きもされなくなるのか。珍しくサビに入るとaiko自身が3声でハモっている。他の曲でもハモりは見かけるが、ほとんど2声である。コーラスに不向きな声質である」

・6曲目「イジワルな天使よ、世界を笑え!」

kenzee「ここでようやくこのアルバムのハイライトが訪れる。実に賑やかなポップ・チューン。冒頭、「てーんしよ世界をわらえーえー」と2声のアカペラで登場するが、ヘッドフォンで聴くと、ヴォーカルブースのルームエコーがマイクに反響しているのがわかる。aikoが意外と声量のある歌手であることがわかる。いつもの4リズムにホーンセクション、ストリングスまで加わった、このアルバム中もっとも予算のかかった1曲。要は、チェイス「黒い炎」のようなブラス・ロックをやろうという明確な目的のある曲。島田昌典氏のアレンジもハッキリと70年代のチェイス、タワーオブパワー、blood,Sweat&Tearsのようなサウンドを目指しているのがわかる。しかし、この99年という時代。女性ソロシンガーの誰もがブラックといえばメアリーJ.ブライジみたいなサウンドと歌い方を目指していた時代に胸毛ボーボーのオッサンの70年代サウンドを取り入れ、しかも「カワイイ女子の応援歌」に仕上げてしまったaikoの異形の才能はいくら賞賛してもし過ぎということはないだろう。強いて苦言を呈すならば左チャンネルから聴こえるワウギターだが、ライン録りのようなのだが、ハッキリ言って全体のバランスから浮いている。アンプを通し、マイク録りにすべきであっただろう」

司会者「やっぱり最初のデモの段階で目的意識のハッキリした曲は完成品もキマるんですね」

kenzee「あと、ホーンのフレーズのバリエーションの多さに舌を巻く。どうせおんなじフレーズ繰り返して、適当なところでソロ吹いてるだけだろうと思ったら大間違いで、コレちゃんとスコアを書いたに違いない。このような島田さんの仕事の細かさがのちのいきものがかりなどにもつながっていくのだろう」

・7曲目「恋堕ちる時」

kenzee「これはのちの「桜の時」「花火」のプロトタイプのような曲。例の4リズムにディストーションのかかったスライドギターがガーンと被ってくるというもの。リトル・フィートのようなアプローチなのだが、この人は胸毛が生えてるとかヒゲが生えてるようなオッサンが好きなのか?(音楽的に)」

・8曲目「夏にマフラー」

kenzee「8ビートのミドル・オブ・ザ・ロード・サウンド。そういえばこういうメジャーセブンス系の曲にはじめてぶち当たった。シュガーベイブ好きの1面を垣間見る。無論、真のシュガーベイブクローンを目指すならばサビと間奏に3声のコーラスを配置すべきだが」

・9曲目「ボブ」

kenzee「ボブ・ディランの話かと思ったら、髪を短く切ったとか言ってるのでボブ・カットのことだろう。エレピとヴォーカルのみ。エンディング近くでカチャカチャいう雑音が聞こえる。一発録りなのか」

・10曲目「ナキ・ムシ」

kenzee「「カブトムシ」のプロトタイプのようなバラード。溢れる思いを上手く伝えられないというもどかしさを描いたラブ・ソング。この「4リズムのミディアム・バラード」「上手く伝えられない、もどかしいの歌詞」「ストリングスでグワー盛り上がる」はのちに日本人の全世代に伝わるトレードマークとなった。彼女はとんでもない金脈を掘り当てたことにこの時、まだ気づいていない」

・11曲目「あした」

kenzee「蛇足のような1曲。しかしこれだけのソングライティング能力が認められてのデビューだったはずなのにナゼ、こんなヘンテコな曲をあてがわれることになったのか。なにしろサウンドから曲調からなにもかも違う。ありえないことだが、もし、これがヒットしていたら後々、苦労したはずだ。この頃の音楽産業はもっとも潤っていた時期だが、「新人のオネーチャンのデビュー曲なんてスマップのヒットメーカーの小森田さんに頼めば無問題ヨ」などと提案したDがいたのだろうか。音楽性とか方向性とか考えず。そう考えるとあの時代とはまだまだ野蛮な時代だったのかもしれない。しかし、aikoの声は驚く程デジタルサウンドと合わない。今のバンドサウンド志向はこの時の教訓に基づいているのかもしれない」

・アルバムトータルの感想

kenzee「とにかくこの時代のJPOPのトレンドを未だに覚えてるボクから見ると時代から颯爽と逆行したレコードだね。この時代背景を考えれば「あした」問題もわからないでもない。当時の感覚だと「趣味的な」音楽に聴こえたのではないか。確かにこのレコードから聴こえてくるのはビリー・ジョエルであり、エルトン・ジョンであり、チェイスであり、キャロル・キングであり、後期ビートルズだ。当時、似たような音楽的背景を持ち、成功していた女性アーティストに古内東子がいる。無論、古内とaikoは全然違う。決定的な違いはaikoは16ビートにかたくなに接近しない、ということだ。横に揺れようとしない。「縦に刻んで、恋を歌う」のがaikoだ。男にとっては割と迷惑なタイプだ」

司会者「なんの話だよ!」

kenzee「こんな調子であと114曲走らないとイカンの? ホンマ、スンマセン。aikoファンの皆さん、ホンマ、謝ります」

司会者「反響薄かったらシレーっとやめれば?」

kenzee「こんなんに限ってねえ、24時間テレビにおける寛平ちゃんのように「ガンバレ」言うヤツでてくるんですよ」

司会者「とにかく次回は2000年3月発表の大ブレイク作品「桜の木の下」10曲だな。(注…私が手に入れたのは通常盤のため、初回盤のみ収録の「恋愛ジャンキー」は収録されておりません)」

kenzee「辛い…」

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コメント

では期待に応えて。
実はaikoのシングルアルバムは初回盤(カブトムシ以降、初回盤の仕様が全て同じ)で揃えているのです。ファーストの初回盤に7000円とか出したアホなので。
ですのでこの唐突なaiko聴き会、楽しみにしてますよ。シングル全てにアルバム未収録曲があるので、アルバムのみにしたのは賢明でした。
CCCDでリリースされた作品は現在では通常のCDで出ていますが、JANコードが同一なので区別つかないし後から入荷してくれる気の利いたお店はないでしょうね。
あ、あと恋愛ジャンキーは初回盤のみではなくシークレットトラックですよ。夏服にもシークレットトラックあります。

投稿: 紅 | 2013年1月 7日 (月) 03時59分

これはすごいです!
楽しみにしてます。僕も「花火」でどハマりして、その後何となくフェードアウトしてしまったクチです(シングルでたまにいい曲あるなあと思う程度)

そう言えば、直近の僕のブログへの反応で一番強烈だったもの
「内容以前に、おっさんが一人寂しく架空の対談をでっち上げてることこそを問題にすべきでは。」
これはkenzeeさんに伝えなくては!と思いました笑
前回記事の「拡散すると変な反応が増える」という話が身に染みます

投稿: レジー | 2013年1月 7日 (月) 08時05分

ガンバレ!
aiko さんはほとんど聴いたことないですが面白いです。是非完走して下さい(・∀・)

投稿: odakin | 2013年1月 7日 (月) 09時10分

ガンバレ!(・∀・)

投稿: リーチ | 2013年1月 7日 (月) 20時37分

aikoはフェイバリットにBilly joel, Jackson sisters, Stevie wonder, CAROL KINGなんかの70s~80sをよく挙げてて、確かに時代的には珍しい嗜好かもしれないですね。

あと「コードが気持ち悪い」とスタッフからクレームつくこともしばしばあったそうです。
http://ure.pia.co.jp/articles/-/1028

aikoって歌詞やファッション、キャラ(ぶりっ子)とかばかり語られて、音楽については自分からも周りからもあまり語られてこなかったので、このお遍路はすごく楽しみです。
がんばってください。

投稿: マギー | 2013年1月 7日 (月) 21時04分

紅さん。
ホントだ!カブトムシやたら容量デカイなと思ってたら、ヘンなパンク曲がガーガーでてきた! 初恋も同様、弾き語り曲でてきた! サービス精神旺盛やな~。で、カブトムシ以降のシングル、アルバム未収録曲入ってるんですか?つーことは26曲!!それだけで裏ベスト(2Discs)できるガナ! 恐ろしい! しかし売るモノがないキャニオンに未だ裏ベストとかライブ盤とか許可だしてないaikoの管理スゴイですね。You Tubeにも全然ないし。aiko初回盤高騰バブルありましたね。「花火」の種みたいなのが入ってるヤツとか。

投稿: kenzee | 2013年1月 7日 (月) 22時43分

レジーさん。
ハア!?オッサンが一人寂しく一人対談デッチ上げてるだア?
「おっしゃる通りでチュ(^ε^)-☆!!」(掟ポルシェ風に全裸で土下座)
と対応するのが紳士的であろう。
長い旅だよ、aikoは…。

投稿: kenzee | 2013年1月 7日 (月) 23時16分

マギーさん。
aikoがJPOP最前線に立ち続ける幸福な違和感読みました。素晴らしいです。aikoのプログレっぷりを(紅白常連歌手の分際で)誰もちゃんと指摘しない日本の音楽雑誌の貧困さ。この問題をやっぱり感じている人はいるんだなあ、と。「aikoさんの歌を聴くと元気がでます」も本当かもしれないけど、「aiko聴きながらクルマ乗ると酔います」がホントの真実だからねエ。「かばん」ちゃんと聴きました。間違った加山雄三みたいなことになってましたけども。スゴイわ。CD売ってることが。もっと音楽の話をみんなするようになったらいいなあ、と思ってはじめました。っていうワリには辛すぎるが。

投稿: kenzee | 2013年1月 7日 (月) 23時25分

ホンマに24時間テレビの寛平ちゃんみたいなことになりつつあるな…

投稿: kenzee | 2013年1月 7日 (月) 23時27分

あしたいい曲じゃないですか
あーうーのとこ最高ですよ
他と曲調が違っててもいいし
これでヒットしてたら苦労したなんて予想になんの意味があるんでしょうか

投稿: | 2013年1月 8日 (火) 03時35分

なんか、いろいろおもしろいです。
全曲制覇頑張って下さい:笑
期待してます。

あ、だんご三兄弟はデビュー時でなくて、2ndシングル(ナキ・ムシ)の時ですねー。

投稿: こもりん | 2013年1月 8日 (火) 21時26分

ア、ホントだ!wiki見たらそのタイミングだね!14年前の記憶が薄れてるヨ!

投稿: kenzee | 2013年1月 8日 (火) 22時07分

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。

投稿: 履歴書の書き方 | 2013年1月18日 (金) 14時26分

この頃ネットでは、aikoの曲ではなく、aikoの容姿議論ばかりが目につくようになり、テンションが落ちていたところこんな面白い記事を見つけました!
歌手は曲聞いてもらってなんぼだと思うので、ファンとして嬉しいです。
これからの記事楽しみにしてます^ ^
あと、私は赤い靴好きですよ。

投稿: ナオ | 2013年4月18日 (木) 09時13分

ちなみに、
だんご三兄弟は1999年ですよ!

投稿: takkyu | 2013年7月 8日 (月) 14時06分

誘導されて来ました。

音楽のことはサッパリわからないのですが、読んでて楽しいです。記事書いている人が楽しんでいる様子が、文章から伝ってくるからでしょうか。

個人的には、このアルバムでは「夏にマフラー」が一番好きです。歌詞が凄く写実的で。

最後まで読み通します。
素敵な文章、ありがとうございます。

投稿: 青いランプ | 2013年10月28日 (月) 21時57分

わしは基本的にクラシックやジャズしか聴かないんだが
TVとかでカブトムシとか勝手に聴かせられてしまって名前は知ってる程度と
昔中古屋でCDがプレミア値段で売ってるからむかつく
別に嫌いではない
最近はブクホとかでアルバム50円で売ってるので買って聴いてみたが
別に悪くないとても素晴らしい世界だ
CD全部同じ調子みたいな感じ

投稿: ペドロ・オカシオ | 2015年6月 2日 (火) 11時11分

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