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ラグジュアリーって経済成長のことだったんだな(aikoマラソン15、8thアルバム「秘密」後編)

kenzee「ボクはレコードのジャケットがたくさん載ってる本が大好き。ジャンルは問わず。その手の本を音楽聴きながら日がな眺めて一杯やるのが幸せな時間だヨ。最近ヒットしたジャケ本はコレ。「ラグジュアリー歌謡」(DU BOOKS)。

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こんな中身。

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いったい「ラグジュアリー歌謡」ってなんだんねん。こういう定義のよう。

おもに80年代の、バブリーな予算と楽曲のクオリティが幸せな正比例をしている音楽。テレビドラマ、アニメ、CMなどのブラウン管から浴びた、お茶の間感覚の親しみやすさもありながら洗練された楽曲。どうしても漂ってしまう上品さ。アイドル歌謡でありながら、洋楽志向のジャパニーズ・ポップスだけがもつ、カフェではなくパーラーな感覚……。そうした要素を「ラグジュアリー」という言葉に込めたつもりです。(前掲書・まえがき(藤井陽一))

マ、言わんとするところはわかります。シティポップスとなにが違うの?という話もあるが、シティポップスには西川のりおとかパーマンの主題歌とか含まれないでしょ?ということだろう。万博期からアイドリング!!!まで実に538枚のジャケットがカラー写真で収録されているが、ほとんどがシングルジャケなのが嬉しい。かつて中古レコード屋でバイトしてたときにサンザン100円コーナーのエサ箱でみかけたジャケたち。こうやって本になるとあんなゴミみたいなレコードでも一人前に見えてくるから不思議。中学時代にブサイクとか言ってバカにしていた女子が大人になって会ったらイッパシのギャルになってたみたいな不思議感覚。一枚一枚にイチイチ解説がついてるのも好ましい。それもフリーソウルのコンピみたいな「コレ、朝方のクラブでかかるとサイコーだよね」的なナメたトークではなく、作曲、編曲、演奏、どこのスタジオで、といったデータに重点が置かれ、勉強になります。ホー、つみきみほの曲って細野・松本コンビだったのか、とか。山川恵津子×森達彦の編曲家対談も面白い。YAMAHA DX-7に代表される廉価のシンセの普及とAOR的な洋楽の流行を背景に一気に70年代の「ニューミュージック」が「ポップス」に変化していった様が印象論ではなく、現場感覚で証言される。などと、冷静を装って書いているがもっとも心に刺さったのは後半の90年代の泡沫アイドルたちのシングルCDジャケ群である。和久井映見とか裕木奈江とか観月ありさぐらいなら平然としていられるが田村英里子、山中すみか、河田純子、田山真美子、山口弘美といったB級アイドルのジャケ(なぜかソフトフォーカス多し)を見て、平然としていられるか。そのいくつかはYou Tubeで観れる。80年代後半のバブル期で金は有り余ってるにも関わらずショボイシンセサウンド。だが、そこが味だ。で、この本に続きてコレを読むのが正しい順番。「アイドル・ソング・クロニクル」(MUSIC MAGAZINE増刊)

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これは読んだ人も多いだろう。Perfumeのブレイク以降、雨後のタケノコの如くポコポコでてきたアイドルのCDガイド。そのほとんどが入手困難、というのがこのシーンの難しさを物語る。冒頭に「つんく×前山田健一対談」がある。これが先の山川・森対談と対になっているようで面白い。あの世代はいかに昔ながらのスタジオ仕事にシンセの編曲家が参入していくか、という戦いであったわけだが、つんくぐらいの世代となるとシャ乱Qのデビュー時からキーボーディスト、シンセのマニュピレーターが当たり前にいたわけで、そのままアイドルプロデュース業にスライドしていった。「バンドってある程度、形が決まってしまうでしょ?むかし吉川晃司さんが、バックバンドが替わるとポンとサウンドが変わるのを見て「これいいな」って思って、それがずっと頭の中にあったから。」(つんく×前山田対談・つんく発言)つんくはどうも編曲から音楽を捉えているフシがある。まさに「ラグジュアリー歌謡」で育った耳だ。ところが前山田までいくとハナからPCになかで完パケしてしまう世代であり、特に作・編曲と分けて考えていないようなのだ。

つんく「詞曲書くんでしょ?基本的に」

前山田「そうですね、わりと(詞・曲・サウンド)全部同時で。第一稿でアレンジまでできてる感じです」

つんく「今の子はみんなそうだよね。でもこれからそうなっていくよ。俺らみたいなんは古いパターンだから(前掲書)

なるほどな~。前山田さんの情熱大陸観たが、マンションの一室の自宅スタジオでアレンジどころか仮歌まで自分でいれてしまうのだ。おそらくももクロの一連の曲も自分で歌った版が存在するのだろう。てっきりボカロとかでデモつくってるのかと思ってたのでビックリした。この本に収録された300曲のうちのほとんどはシングル一枚で消えていったグループだったりするが、あえて「いい時代に生きてるのかな」と思えてくるのだ。また、万博の70年から2012年までをこれらの本で俯瞰して見るとロックの文脈の外にこれほど芳醇なポップ史が並走していたのか、とため息がでる。それにしてもジャケ本読みながらYou Tubeで音聴きながら盃を重ねるとあっという間に日が暮れるよ。でもボク自身はヒャダインさん以降のPC音楽には食傷気味。まさにつんくさん世代のバンドでスタジオ録音みたいな音楽ばっかり聴いてるよ。正直、ヒャダインさんみたいな音楽だと酒飲んでも旨くないんだ。ラグジュアリー歌謡はギリギリセーフなんだけどね。結局、ボクが好きな音楽って「金・酒・女」を連想させる、、またそういう市場を意識してるものなんだね。つんくさんの音楽にはボクの好きなものが大体入ってるんだ。「バンド出身」で「金・酒・女」を強く意識しているという点で。「アイドル・ソング・クロニクル」にはAV女優のシングルまで掲載されているのにそういった場末感が全然ないんだよね。それは日本社会から「場末」が消失していったことのメタファーでもあるのか」

司会者「ここで終わるたいところだが「秘密」の後半は避けられません」

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・10曲目「星のない世界」

kenzee「いつものバラード。他になんて言えばいいんだ? この人ホント、バラードでシングル切るよね。今回の「四月の雨」もバラードだし。ああそうか。前回が「シアワセ」でその前が「雲は白リンゴは赤」だからバラードは「スター」以来なのか。まあ、「スター」の続編のような曲やね。……」

司会者「ハ?もう言うことないんじゃ?」

kenzee「さっきの話にムリクリつなげると、こういう音楽は「ラグジュアリー歌謡」の末裔なのだよね。作家・編曲家がいて、プレイヤーがいてスタジオがあって、という。2008年といえばもう、前山田さんみたいなシーンはすでに形成されていただろう。あまり言われてないことだけどももクロは現在の「作・編曲一体」の最たるものだよね。でもAKBってギリギリ、前時代の「ラグジュアリー歌謡」のサウンドなのよ。90年代にでててもおかしくないタイプの音楽なのだ。ア!それでナゾが解けた! オレ、何個か前にスナックの話してたジャン! で、「ヘビーローテーション」はスナックで聞いて初めてその意味わかる、みたいなトコあるという話をした。それは「ヘビロテ」がギリギリラグジュアリー歌謡だからだったのだ。ももクロはいかによくできた楽曲だとしてもスナックには合わない。ヒャダインさんの音楽には「金・女・酒」からもっとも遠いところにあるものだ。「ヘビロテ」にはその匂いがある。高度成長からバブルにかけてあった、年収200万円の下層民にも努力すれば報われるかもしれない、という希望があった時代。いかがわしさの先にほの見える希望。そういった、キラキラしたものが「ヘビロテ」にはあったのだ。音楽のことはよくわからなくとも、経済が上を向く時代の空気を一度でも吸った者なら「ヘビロテ」が何を描いているかわかったのである。だからAKBの音楽は表層的にはダサく聴こえるのだ。それは我々日本人がダサいことを表してもいるし、またそのダサさに夢をみてしまう民族なのだということも「ヘビロテ」は露わにしてしまった」

司会者「エ?で、「星のない世界」は?」

kenzee「aikoの音楽にはあまり経済成長期特有のシミったれた場末感はない。かといってユーミンさんのような有閑階級感とも違う。なにか超然としたところがある。なにか文化とかコミュニティのなかで流通するタイプの音楽ではない。また、いきものがかりのような「オッサン・オバサン市場にまで食い込む貪欲さ」も感じられない。つまり純粋に音楽的な音楽なのだ。でも、どうしてよりによってaikoがこのような超然とした位置についたのかよくわからない」

・11曲目「シアワセ」

kenzee「印象的なピアノのイントロで始まるaiko流メジャーセブンス系16ビート。イントロメロがそのままAメロに受け継がれるというaikoにしては珍しい洋楽的な発想。いっつもイントロとAメロは別モンです!みたいなつんくみたいな考え方だったのに。A♭M7・Gm7・Fm7・E♭M7の間をひたすらウロウロするだけという一気に作ったであろうことが窺える一曲。このようなあまりヘンな進行にこだわらず直球で作った曲は大体ボク好き。ていうかやろうと思うえばできるヤン、と言いたくなる。間奏の攻めてくるドラムに70年代の全盛期の上原裕氏を想起させる」

・12曲目「ウミウサギ」

kenzee「ピアノ1本からウッドベースが加わり、サビでいつものリズムセクションとなる。こうなると彼らがジェームス・テイラーを支えるザ・セクションのように思えてくる。ウッドベースはリーランド・スクラー、間奏のボトルネックのディストーションギターはダニー・クーチに違いない。洒落たジャズ風のオブリが入る島田氏のピアノは実はクレイグ・ダーギーだろう。ガラス細工のような正確な佐野さんのドラムは実はラス・カンケルだ。昔、(93年ごろ)キャロル・キングの在籍していた幻のバンド、「The City」のCDが再発となった。なんで高校生がそんなナゾのCD買ったかというと小西康陽さんの解説だったからだ。そのなかで彼らバンドメンバーは実にリラックスしてレコーディングしているのがわかる。今日はランチはどうしよう、中華のデリにしようか、とか言いながらノビノビやっていたのだろう。 とか書いてあった。もし、タイムマシンがあったら、行くのは69年のニューヨーク。そしてシティのメンバーに聴かすのだ。「これは未来の日本のキャロル・キングとセクションの演奏だよ」と言って。彼らはなんと言うだろう」

司会者「片岡義男風でございます」

・13曲目「約束」

kenzee「ボクの好きなA→D#m7-5が入ってるから好き。「幸せも痛みも 永遠の約束」のやくーそくーで素直にBm7→Bm7onEに行かず、Bm7→C#m7→F#m7→Bm7onEと一箇所だけプログレッションが変化するところが好き。この頃のaikoのアルバムは最後に「オヤスミー」とでも言うような小品のバラードが必ず収録されていて、単行本を読み終えたような満足感が残る。このiPodの時代にあっても」

・アルバムトータルの感想

kenzee「まあ、超然としたレコードだね。ケチをつける隙のないアルバム。ライブやリハーサルを重ねて築いてきた鉄壁のリズムセクション。現行のR&Bみたいなサウンドやらないのかな?とか思ってたけどこれほどのバンドを手に入れて、あえて他の音に挑戦する必要もなかろう。おそらく10年後もこの路線でやっているだろうという定番感がある。ムリクリケチつけるならこれまでaikoのトレードマークであったヘンテココード進行とかヘンテコメロがすっかりなくなってしまったことだ。「どうして?」っていう瞬間が全然ない。実は「かばん」とか「雲は白」とかで大笑いするのもaikoの楽しみのひとつなのだが、こういうと怒られるだろうか」

司会者「あと2枚か」

kenzee「「BABY」と「時のシルエット」。長い登山だったがようやく頂上が見えてきたようだ。ホントにここまでくるとはねえ。つってもあと27曲だから全然遠いんだけど。1月から始めてまさかaikoでゴールデンウィーク迎えるとは思わなかったよ」

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コメント

今回はkenzeeさん、いつになくおセンチな感じがしました・・・錯覚でしょうか?
「ラグジュアリー歌謡」に始まりaikoが何処にも属しそうにない音楽である事。
「へぇ~」っという驚きと「やれやれ」という納得・・・そんな雰囲気を共感させてもらいました(抽象的ですみません)。

投稿: はっち | 2013年4月22日 (月) 15時47分

3週に渡る秘密レビューお疲れ様でした。

シアワセは初めて行ったライブで大トリだったんですが、これがとんでもなくハマってまして。それまでの演奏を聴いて自分の感情が正にシアワセだったので最後にこの曲が始まった時はうわぁーっと気分が高揚したのを今でも思い出します。
こういう甘ったるくラブラブな歌詞は苦手なんですが、aikoのメロディーだとすんなり耳に入ってくるんですよね。くどくない。不思議だ。
秘密にヘンテコメロはないですが、横顔/星のない世界のカップリングの恋愛という曲は中々の変態かと。先日発売されたDVDにも収録されてるので是非ご一聴ください。


スナックの話のとこでコメントしようとしたんですが、自分がイメージするaikoの音楽はこんな感じ!とは説明しづらいと思っていたらaiko自身がPVで表現してるのがありました。
Smooch!のPVです。
http://musicpvmw.blog86.fc2.com/blog-entry-2748.html

ご覧になれているのを前提で話しますが、僕はaikoの音楽からキャバレー、ナイトクラブを連想します。aikoの世界観を良く表していると思うのですが、、、的外れだったらゴメンナサイ。

投稿: ヨシピコ | 2013年4月22日 (月) 20時36分

はっちさん。

どうも最近、酒飲むとシミジミするようになって。逆にあんまりハイテンションにならないんですよ。

投稿: kenzee | 2013年4月23日 (火) 00時11分

ヨシピコさん。

smoochのビデオは観れませんでした(ノД`)
でも画像検索で大体言わんとするところは。
シアワセは鉄板曲ですねー。ああいうヤケクソみたいな曲で吉とでることがあるんですよね。キャバレーってアレですかね。永井荷風的な。新世界に行くと叶麗子という歌姫がいますがね。歌謡劇場って言うんですけど。

投稿: kenzee | 2013年4月23日 (火) 00時29分

aikoレビュー、初回からここまで通して拝読させていただきました。とても楽しいです。
よい評論って、「よし、じゃあ聴いてみるか」ってちゃんと音楽に向き合えるんですよね。
もちろんaikoは元々好きなんですが、改めて聴き直してます。

B面にもいい曲、結構ありますよー

投稿: marquee | 2013年4月23日 (火) 19時42分

今、もっとも胃が痛くなる言葉ベスト3。
・B面曲もいい曲いっぱいあるヨー。
・インディーズ盤「GIRLY」もゼヒ!
・デビュー前のオムニバス盤「astral box」もゼヒ!
・「まとめ」の再録曲もYAVAIヨ!
胃がキリキリしまちゅ。ウソウソ!ア!ベスト4だ!

投稿: kenzee | 2013年4月23日 (火) 21時03分

秘密ってミックス的にも派手さがないですけど、ものすごく職人的で安定してますよね。

このアルバムに限らず、全体的にaikoってものすごく正統的というか、保守的な音楽活動しててますよね。
きっとその間にスタジオにはお宝音源がたくさん詰まってるはずなんですけど、Beatlesのアンソロジー的なアルバム出してくれないかなーって最近ちょっと期待してたりします(笑)15周年だし!

あ、とりあえずB面はほんとにいいですよ(笑)

投稿: マッドチェスター | 2013年4月23日 (火) 23時18分

秘密、三回に分けて執筆頂き大変お疲れ様でした。
kenzeeさんのお陰でaikoの音楽性の高さを再確認および再発見できてファンとしては嬉しい限りです。いつも本当にありがとうございます。早くヴィレバンへクイックジャパンのバックナンバーを探しに行きますね。←社交辞令と違うやろな!?

最近、こちらのブログをaikoご本人に読んでみて欲しいなぁと真剣に思っています。実際aikoさんって街でaikoグッズ着けてるファンに声掛けてくれるようなヒトなので、突然ニュッと現れてくれへんかなぁとか考えてしまいますよ。想像するだけでドキドキワクワクしております。

あと、お知らせですが、今年も夏にライブやるって言ってましたよ!15年を振り返る感じなのでいつも以上に新旧織り交ぜたライブになることでしょう。
しかも今回はファンクラブ限定の会場もあるとか!これはもう絶対に当たって欲しいので、この機に子供も入会させます。

投稿: | 2013年4月28日 (日) 22時08分

↑すいません、名前書くの忘れました。らば〜そうるです。

投稿: らば〜そうる | 2013年4月28日 (日) 22時10分

本人が現れたら…自殺するかな…。ウソウソ!15年!生まれた子供も中3やからねー。

投稿: kenzee | 2013年4月29日 (月) 19時36分

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