« キミならこの20万、どう使う?(kenzeeの社会見学) | トップページ | 最近読んだ本の話(吉田健一「汽車旅の酒」、佐々木俊尚「21世紀の自由論」) »

kenzeeの社会見学・夜の部(前回の続き)

(前回までのあらすじ)kenzee、印税20万円を手に、大都会梅田へやってくる。普段立ち寄らないような場所で「検索ワードを探す旅」へ。最新型ショッピングモールなどでいろいろビックリする。でもまだ20万のうち、1万円も使えてないヨ・・・。

kenzee「珍しく歩き回ったので、まだ4時ぐらいだけどお腹も適当に減ってきた。オシャレモールはもうお腹いっぱい。フダンのボクらしく、大阪第一~第三ビルの地下街を探索する。

Ekimae1


ここは・・・東京に喩えるとなにに該当するのだろう。中野ブロードウェイとかだろうか。イヤ、サブカルとかそういうことでもない。この大阪駅前ビルは1970年代にできた昔のオフィスビルである。とにかく地味だ。大阪最大の交通の要所たる梅田らしく金券ショップがやたら多い。日本最大の金券ショップ密集地らしい。空きテナントが目立つがそのシャッター店舗を縫うように喫茶店(カフェじゃないよ。キャラメルマキアートはないけど「レーコー」は通じる。そんなサテン)や立ち飲み屋やインド料理屋、タイ料理屋、沖縄居酒屋、洋食屋が軒を連ねる。無論、個人経営の店である。エログッズ専門の信長書店やアダルトショップも多い。古本屋、中古レコード屋も多い。中古レコードといってもアメリカ村(東京でいう渋谷のような若者街)によくあるレアグルーヴの12インチとか輸入盤の新譜とかそういうことではない。60年代の歌謡曲のLPとか往年のストーンズとかのロックとかそういうことだ。渋谷レコ村も心斎橋のレコ屋街も壊滅してしまったが、ここの中古屋はそんな時代の趨勢にほとんど影響を受けないで今も70年代そのままに営業中。自分がいつの時代の人間かだんだんわからなくなります」

司会者「ヲイヲイ、それじゃいつものキミの行動パターンじゃないか」

kenzee「しかし、古本屋でも中古屋でもとくに購買意欲は沸かないのだった。20万円も持っているのに。もしや「購買意欲」とはそういうものなのかも知れない。「カネがない」から余計欲しくなる、というような。そんなワケで「やすきよ漫才」EP1800円なども興味深かったが見送った。この大阪駅前ビルだって、「ハコありきでテナント入れてナンボのモール」という点では前述のなんばパークスやルクア1100と同じ業態のはずだがこのビルは全体に薄暗い。早い話がデートに向かない。ボクはこのような繁華街の隅っこにある「デートに向かない薄暗い、オヤジの陰気な愉しみを満たしてくれる場所」が大好きだ。この大阪駅前ビルは夜になると建物ごと閉めてしまうので深夜営業前提の業態、つまりネットカフェや漫画喫茶などはまったく進出していない。つまり昔気質の陰気なオヤジだけが相手のビルなのだ。イマドキのオタクなど相手にしていない。そんな陰気で薄暗いビルのどこかで一杯やりたい。

・餃子専門店でいろんな餃子を食べてみる

餃子専門店を見つける。餃子専門? 餃子といえばボクは王将の餃子しか思いつかない。入ってみる。生ビールのセットがある。生ビールの中ジョッキとキュウリの漬物と大人の親指ほどのサイズの焼き餃子がドサっとひと皿。これは噂に聞く九州全域でデフォルトとされる鉄鍋餃子というヤツか? 2、3個まとめて食べてみる。美味い。焼き餃子なのにサラっとしていて王将のような脂っこさがない。これはビールのアテにもってこいだ。あっという間にひと皿完食してしまった。もっといろんな餃子を試してみよう。エビ餃子や蒸し餃子などの盛り合わせがある。これだ。餃子屋なのに意外と日本酒の品揃えが豊富だ。冷酒をもらう。

Gyoza1_r


完全に飲みの態勢である。蒸し餃子と日本酒がこれほど相性がいいとは。しかし、蒸し餃子の場合、白ワインという手もあったかも知れない。だが今日は酒の気分なのだ。ところで背後のサラリーマン集団のテーブルがうるさい。狭い店内で聞えよがしに大声で笑い声をあげる。無論、コチラも一人飲み初心者ではない。こんな時のためにウォークマンがあるのだ。イヤフォン(オーディオショップではなく近所のホームセンターで2980円で購入したもの)をして騒音完全シャットアウト。ランダム再生する。ちなみにボクは音楽はスマホでは聴かない派である。音楽用のデバイスは別にしたい。スマホ(EXPERIA)の中にもウォークマン入ってるのにネ。でもポッドキャストを聞く時はスマホなんだ。なんだんねん。結局、餃子以外のメニュー、煮込みやカツオのタタキなどもいただき、冷酒をおかわりする。初めての飲み屋でこんなに満足していいのかしら。勘定を頼むと四千数百円。なかなかイイ値段である。このような飲みのために温存しておいたのだ。このカネは。外へ出ると陽が暮れかけている。歩いてみる。そうだ。

・浪費の王様、キャバクラへ行ってみる。

司会者「結局、ソレかよ!」

kenzee「キタで堂山といえば、西日本一のハッテン場、つまりゲイタウンである。無論、有数の繁華街でもある。そしてガールズバー殺人事件のようなどうなの的な事件も頻発しているデンジャータウンでもある。しかし、ちゃんとネットで下調べをすればちゃんとしたお店にたどり着けるのである。コツは無料案内所などを通さず、自力で探し出すことである。そしてたどりついた某キャバクラ。40分8000円、生ビール飲み放題。女の子が3人交代するそうです。コレをどう読む? ボクはてっきり女の子のドリンク代とかナントカ指名料などで結果、さらに5000円ぐらいかかるものではないかと思っていた。まあ、そのぐらいボラれるのもよかろう。そう考えていた。しかし、しかしだ。ホントに最初のボーイの説明の通り、ボクは8000円ポッキリで40分間、十分に楽しんだのであった。「エ?そんなんでイイの?」と問い返したほどだ。それではサービスはどうだったのか。一言で言うと、3人とも実にちゃんとした娘たちだったのである。そのまま明日から銀行の窓口業務を担当してもいいぐらいだ。「田舎から家出してきてそのままこの世界入っちゃいましたー」というようなダメ感が微塵もない娘たち。どういう人々なのか。最初についたA子さん。「昼間はバレエのインストラクターをしている。しかし、そっちの商売も最近はなかなかムズカシくなってきた。で、夜はバイトで来ている」せ、先生でしたか。ちなみに年齢は?「28歳です」微妙なトシである。もうちょっとサバ読んでも大丈夫そうな娘である。そんなのオイラぐらいのオッサンになったら28も23も同じに見えるんだから「23歳」ぐらい言っておいてもいいんじゃない?「同じぐらいの年齢のお客さんが(水商売系の接待などでよくある)来た時に細かいところで話が合わなくなってバレたりするので正直に言っている。たとえば今の実際の23歳はギャルでもあゆ(浜崎あゆみのこと)とか全然興味なかったりするのでそのへんでバレる」なるほどね~グビグビ。B子「音楽好きです」音楽ネ~ボクもワリと好きヨ~R&Bとか」

司会者「オイ音楽評論家!」

kenzee「B子「V系が好きです」そっちはボクは全然ダメ。ルナシーで止まってるからね。「V系の歌詞風にトークする」などとバカなルール設定をする。「その琥珀色の液を~もう一度~ボクの乾ききったノドに~」(裏声を交えながら)とか言いながらおかわりする」

司会者「なにやってるんだよ」

kenzee「C子は専門学校生。服飾系。20歳。フーン。確かに言葉がちょっと違うネ。「長崎県の佐世保出身です」ホウ。村上龍の出身地で小説「69」の舞台である。「村上龍の出身地だネ!」知らないそうです。なんとジャパネットたかたのテレビショッピングは佐世保市内のスタジオで収録されているそう。どうでもいい情報を得たゾ! そんなこんなで40分。イヤー浪費した。さてまだ時間は8時半。どうしたもんかな?」

・新地で飲んでみる

kenzee「もうちょっと飲んでみよう。それもちょっと高級なところで。そこで足は北新地で向かう。北新地を東京の人にどう説明すればいいだろうか。銀座の高級感と赤坂あたりのチャラチャラした感じをかけあわせた感じだろうか。「ホーミタイタイ!」上田正樹の歌に「憧れの北新地」というのがあるぐらい関西人にとって新地とはステータスゾーンなのである」

司会者「そ、そんなトコのクラブとかに飛び込みで入ったらホントに20万円ソックリ取られちゃうよ!」

kenzee「ボクもそこはぬかりない。北新地には有名なオーセンティックバー「サンボア」があるのだ。

Sanboa1


オーセンティックといってもスタンディングバーなのでいくら高いといっても何万円もいくことはない。「サンボア」は戦前からの歴史があり、角のハイボールの発祥としても有名だ。中島らも「今夜、すべてのバーで」の中にも若き日の主人公が「ハゲの文化人」をオチョクる、というシーンで登場する。「サンボア」ならクイクイ飲んでも1万円以内で収まるハズだ。重そうな扉を開ける。バーテンさんはイマドキ珍しい蝶ネクタイと白シャツというキチンとした服装。お客さんは定年退職後悠々自適といった感じの初老の二人がテーブル席で相撲談義。ボクはカウンターで定番の角ハイボールを頼んでみる。ここはハイボールには氷を入れない主義である。最後までウイスキーの味がする。あっという間に飲み干してしまう。ウイスキーをロックで飲みたいがなにかオススメはあるか、とバーテンさんに聞いてみる。「モンキーショルダー」というスコッチウイスキーを勧められる。オイチーネー。この辺で相撲談義の二人が帰ってしまう。なんと。吉田類や太田和彦の飲み歩き本にも登場しそうなシャレたバーでバーテンさんと客はオイラ一人(前身ユニクロ)。なんという瞬間。しかもこのバー、音楽ナシの無音なのである。なんだコレ? オレは村上龍か? 「マスター、すべての男は消耗品かもしれないネ。でも、だからこそ自由だとも言えるんだよネ」とか言うべきなのか? 「キューバ音楽におけるシンコペーションって、つまり「抑圧」から生まれたんだよね」とか」

バーテンさん「アレ、ユニクロのお客さん、もう酔っぱらっちゃったんですか?」

kenzee「とか言われかねないので普通に話しかけてみる。どうせ客はオイラ一人なのだ。「カクカクシカジカでちょっとしたオキャネがポーンと入ってきたんですケド、マスターならどう使います?」

バーテンさん「そうですねえ。まあ20万ぐらいだったらパーっと飲食で使っちゃいますね。そうですね、帝国ホテルの久兵衛で鮨とか・・・」

kenzee「そうか!そういう方向があったのか! 500円皿とかの発想したなかったボクの貧困さよ。そうね。そういうホンマの寿司屋でビクビクしながら刺身とか切ってもらっちゃうとか。さすが新地の老舗バーのマスターは気の利いたことを言う」

司会者「イヤ、キミが貧困なだけだと思うな」

kenzee「では帝国ホテルの久兵衛は今度またバーンとオキャネが入ったときに挑戦してみよう。村上龍ごっこも楽しんだ。ウイスキーのロックも結局3杯も飲んじゃった。オアイソしてもらおうかナ」

バーテンさん「6800円でゴザイマス」

kenzee「なかなかのお値段だが決して高くない。しかも「新地で飲んだ」という満足感もアリ。そんなこんなでもう10時。アッサリしたラーメンでも食べようかね。堂山揚子江ラーメンで塩ラーメン。こんなギトギトした街のど真ん中でこんなアッサリした塩ラーメンが食べれる。今日はよく歩いてよく飲んだナー。それにしても後からジワジワ感じるのはね。サービス業の人々のリテラシーが異常に上がっているのではないかということだね。キャバクラ行ってもコンビニ入っても従業員がみんな物凄くちゃんとしてるのだ。どこ行ってもスゴイ丁寧に扱われる。回転寿司に行けば10パー割引してくれるし、キャバクラはポッキリ料金だし、オレ、ラッキーだっただけなのかな。それとも現代の都市はこれがデフォルトなのか? だとするとこの高水準リテラシーについていけないような人々はどこへ行くんだろう。敬語がロクに使えない若者とか昔はいっぱいいたのに。酔った頭でそんなことを考えてしまった。帰りの電車では久しぶりにスヤスヤ寝てしまったヨ」

|
|

« キミならこの20万、どう使う?(kenzeeの社会見学) | トップページ | 最近読んだ本の話(吉田健一「汽車旅の酒」、佐々木俊尚「21世紀の自由論」) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/185233/60232467

この記事へのトラックバック一覧です: kenzeeの社会見学・夜の部(前回の続き):

« キミならこの20万、どう使う?(kenzeeの社会見学) | トップページ | 最近読んだ本の話(吉田健一「汽車旅の酒」、佐々木俊尚「21世紀の自由論」) »