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The Back Door to Heavenだけが異質な曲。そして現在につながる曲(コーネリアスマラソンその5)

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(コレがファーストクエスチョンアワードだ!)

kenzee「コーネリアスマラソンその5。今回は8曲目「The Back Door To Heaven」から。」

 https://youtu.be/tAtVc0kbvZY

kenzee「このFirst Question Awardアルバムはほぼマニュアルプレイ、つまりスタジオミュージシャンによる人力プレイのアルバムなのだが唯一、マシンのビートと小山田氏自身のアコギのみで構成、という6分半もある曲なのに基本EM7→AM7の2コードだけで突き進んでゆく異色の一曲。一応歌ものではあるのだが歌が始まるのが4分近くになってから、という内省的な曲。無論、この曲のアイデアはプライマル・スクリーム「ディキシーナーコEP('92)」収録の「Screamadelica」で間違いないであろうが、今聴くと元ネタがどうこうとかより後のコーネリアスを考えるうえで重要曲と思えてくる。

 https://youtu.be/F-JtmHJ6ZgI

このアルバムは全11曲、インスト曲1曲を除き、「歌もの」のアルバムなのである。うち9曲がこの時の小山田氏の態度表明のような歌詞で占められている。すなわち「この情報社会でボクたちは安易に特定の思想信条にとらわれるわけにはいかない。自分の身を守るためにはあらゆる価値を相対化し、軽やかにセンスで乗り越えてゆくのだ。無責任と言われようがこれが現代の都市をを生きる若者の生き方さ、」とでも言うようなオピニオンの言葉である。いわば「外部に向けられた」言葉で占められたレコードである。結果、1枚聴き通すと妙に疲労感に包まれることになる。だがこの「The Back Door~」だけが異常に言葉数の少ない、内省的な言葉だけで綴られた曲なのである」

  The Back Door to Heaven 近づいてく 海の底深い宇宙へ 内側へと広がって行くよ遠くへ

たったこれだけの歌詞。サンザン、「俺は相対主義者の虚無主義なんだ!ほっといてくれ!」と開き直ってきた楽曲のさなかにふと、内なる声に耳をすませた瞬間がある。この曲だけが屹立している。また、それが魂の解放とえもいうようなイメージであることに注目である。というのもこの曲のみが2006年のシングル「Music」、「Breezin'」~アルバム「Sensuous」へと繋がるコーネリアス流のミニマルの音と言葉の世界の源流のように思えるからだ。無論「Sensuous」期の細やかなサウンド作りに比べるとまだまだ大づかみな音と歌詞ではある。しかし我々のよく知る現在のコーネリアスの世界、たとえば「デザインあ」の言葉とサウンドの世界の萌芽がすでにこの時点で芽生えていた、というのはこのマラソンでの発見である。おそらくこの時小山田さん自身も「The Back Door~」が自分の音楽の本質で、今後これを深めていくことになる、とは思ってもいないだろう。コロコロ変化していくプライマルの最新サウンドを取り入れてみた、ぐらいの感覚だっただろう。この曲の歌詞だけがリリックと呼びうるものだ。他の歌詞など青年の主張レベルに過ぎない」

司会者「ヒドイな、オイ」

kenzee「このアルバム中、繰り返し聴いても疲れないのはこの曲だけなのだ。不思議なものだ。セコイ話、他の曲は結構高いスタジオミュージシャン使いまくった予算のかかったレコーディングで、会社的にも売る気の企画だっただろう。「The Back Door~」はほぼ小山田さん一人で完結した曲で、予算的にはゼロに近い。なのに四半世紀あとの未来の耳で聴くとこれだけが純粋に音楽的な音楽なのだ。無論、当時18歳の耳で聴いたときはなんとも思わなんだ。「なんか地味な曲が混じってるナ~」ぐらいの感じだったと思う。こんな流行にばっかり気を取られているようなアルバムの中にずっとひっそりと収まっていたのだ。未来の耳に聞かれるために」

司会者「それは聞き手が単に年をとって音数の多い音楽を聴くのがシンドくなっただけでは(ニヤニヤ)」

keznee「まだ3曲も残ってるのにまとめみたいな話するのは早い気もするが、このFirst Question Awardアルバムはとても「強い」音楽なのだよ。脆さ、とか弱さ、といった要素がまったくない。ポップスメーカー小山田さんの作曲、編曲で一流のスタジオミュージシャンが演奏、で歌詞は決意表明のような強い言葉でスキのないように作られた音楽なんだね。だが、日本人って私小説の国で強いから好きになる、という文化ではないのだよ。「脆さ、弱さを告白する自我こそに価値がある」みたいな文化の国なのよ。太宰治と村上春樹「ノルウェイの森」が大好きな国民で、私小説性を全面に打ち出していった小沢健二さんが国民的な人気をえるのは必然でもあった。(あの人はそもそも私小説がすきなんだと思う。)First Question Awardは今の耳で聴くとよくできたポップス集とは思うが、あんまり感動しない。悪いと言っているのではない。私小説の国では相容れないタイプの資質だったのだと思う。後に国境を超えてグローバルに受け入れられていくのも偶然ではなかった。小沢さんの音楽は国境を越えようがないところがある。極めて日本人的な音楽なのだ」


司会者「9曲目Theme From First Question Award(ファースト・クエスチョン・アワードのテーマ)」

 https://youtu.be/ZultlXQ7GdI

kenzee「一聴してだれでもわかるようにこれはバートバカラック作曲の「007カジノロワイヤルのテーマ」を参考にしたものだ」

 https://youtu.be/kyMziCJYHkw

kenzee「2分足らずの小品。バカラックをネタにアルバムの雰囲気をガラッと変える用のスキットみたいな曲を挟むアイデアはフリッパーズ時代にも「カメラ・トーク」で「南へ急ごう」で試し済。オイラも今回の騒動がなかったら改めてコーネリアスをファーストから聴き返そうなんて思わなかったわけで。四半世紀ぶりにファースト聴こうと思ったら2017年にリマスターでてたと知らなくてスポティファイにあがっててビックリ。したらアルバムにもシングルにも入ってなかったこの曲の英語の歌詞ヴァージョン(マヨネーズのCM)もリマスター盤には入ってて二度ビックリ。全然クエスチョンって感じのしないひたすら明るいポップス。でも、とくに言うことがないなア。。。カジノロワイヤルのテーマ。。。筋少がカヴァーしてたな・・・日本語詞つけて。。。」

司会者「あと2曲」

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