結局ふたり仲いいんジャン!(コーネリアスマラソンその3)
kenzee「コーネリアスマラソン、その3。今回は4曲目「Perfect Rainbow」からです」
https://youtu.be/V9ytKaZ6uo0
kenzee「70年代のフォーク・ロック然としたアコースティックソウル。いかにもギター弾きながら鼻歌で作ったという感じのポップス。この曲のネタは有名なフリーソウル定番曲、Alzo&Udine「Hey Hey Hey,She's O.K.('68)」である」
https://youtu.be/W6evJsSYbBg
単純なメジャーセヴンスの2コードの小粋なヤングソウル、といった元曲だが小山田さんは「もっと歌ものらしい歌ものに展開できるのではないか?」と考えたに違いない。GM7→Am7onDのポップスの進行でスタートするがサビになると小山田さんにしては珍しく饒舌な展開となる。「なーなつーのーいーろーをー」の箇所だが、
GM7→F#m7-5→B7→Em7→Dm7→G7→CM7→Bm7→Em7→Am7→Am7onD
というなかなかコードチェンジの激しい歌謡曲らしくなる。この歌謡曲らしさ、というのがこのThe first question awardアルバムの特徴であまりクラブユースみたいなシブヤ的、ヤング的な方向に意外と目が向いていない。むしろ「歌もの」とはなにか、というテーマがあったように思える。これは同時期にソロデビューした元相方小沢氏も同様の方向を向いていた。上記のコード進行は当時、気に入っていたようで「Moonlight Story」のAメロでも使われている。あとAlzo&Udine曲になくて「Perfect Rainbow」にあるものとなると八木のぶお氏のクロマチックハープ(ハーモニカ)ということになる。このクロマチックというのはスティービーワンダーでオナジミのレバーで半音がでるというもので長渕さんや甲本ヒロトさんが使用しているブルースハープとは違うものです。間奏で転調を繰り返すシーンで軽々と乗りこなすハープは高等テク。「ハープを入れよう」というようなアイデアは小山田さんの発案と思われるがフレーズやメロディを指定することはなかったと思われる。「歌とカブらないところで適当に吹いてください」といったようなアバウトな指示だったのでは。無論、八木さんクラスの名手ともなると自由にやってもらった方がいい結果になるのだが小山田さんの才能とはこの「年上のプレイヤーに与えるスペースを踏まえた曲作り」ということになろう。ガチガチに決めてしまわない、その場の空気とか偶然まで取り入れて形にする寛容な作家イズム、とでも呼びたい才である。歌詞は当時の小山田さんらしい「まるで弾みやしない会話続けるように」という諦念についての歌。歌詞に関してはアルバム全体に言える「せっかく最高の素材で甘いお菓子作ったのにその上に塩コショーぶっかける」みたいなことになっていて今聴くと古く感じるものになっている。この年になってわかるのはポップミュージックの歌詞とはくだらない、単純な内容であればあるほど歴史の試練に耐える、ということだ。そう考えるとシュガーベイブや大瀧さんの初期の歌詞はポップス的に正しかったのだとわかる」
司会者「5曲目「Bad Moon Rising」」
https://youtu.be/-IMAwRGcvNk
kenzee「ニューソウル期のカーティスメイフィールドやダニーハザウェイを思わせるコーネリアス流のシカゴソウル。ただしジャミロクワイ経由のノーザンソウルという感じ。「デッデッンデッンデ、ドゥン、デッデッンデッンデ、」のカーティス「Tripping Out」や山下達郎「甘く危険な香り」でオナジミのリズムパターンのソウル。四管のブラスに金子飛鳥ストリングというなかなか予算のかかった1曲。
Gm7→FM7の2コードの繰り返しからサビで大展開、という「太陽は僕の敵」と同パターンの進行。注目すべきはブリッジの部分。「永遠に続く 退屈な昼と 嘘くさい夜の間~」の箇所だが、
Cm7→F7→B♭m7→E♭7→E♭m7→A♭7→D♭M7→D♭m7→G♭7→G♭m7→B7→Gm7→A7
と8小節の間にエンエン転調を繰り返す箇所だが、同じブリッジ展開を小沢健二さんも「ローラースケートパーク」で「それでここで君と会うなんて 予想もできないことだった 神様がそばにいるような時間」のブリッジ部で使用しているのである」
司会者「「二つにわかれたストーリー」とか言って! 結局気が合ってるじゃねえか!」
kenzee「サウンドだけ「アシッドジャズ風」とか「フリーソウル風」とか言ってても骨格は一緒、みたいな。仲良しダナーホンット、アンタたち。ついでに言うと「デッデッンデッンデ、」のビートは小沢さん「天使たちのシーン」でも使用されているものです。結局似たようなこと考えて制作してんジャン」
司会者「友だちっていいもんだね」
kenzee「ていうことを言いたいためだけに必死にコード採ってます。次回は6曲目「カナビス」からだな」
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コメント
フリッパーズのファンです。
楽しく読ませてもらいました。
投稿: ゆうこ | 2021年9月 9日 (木) 15時09分
アリガトウ!
投稿: kenzee | 2021年9月 9日 (木) 20時32分